2006年京都紅葉の旅

 いかがですか?上賀茂神社は葵祭の終点としても知られています。境内の紅葉の美しさは、予想をはるかに上回るものでした。真っ赤に染まったもみじの葉は、青空をバックにするとさらに色彩が映えます。
 上賀茂神社の鳥居を出たところで、ちょっと甘いものが欲しくなりまして、有名な「焼き餅」(神馬堂)を一つずつ。すぐに売り切れてしまうその焼き餅は、私たちが行ったときには、午前中の分がちょうど二個残っていただけでした。ラッキーです。さあ、ここから詩仙堂・曼殊院方面にバスで移動します。

 天龍寺の境内に入る前の駐車場で撮影したこの写真。背景のもみじは実に美しい様々な色彩の葉を擁しておりました。そのあまりの美しさにカメラを向けたのですが、フラッシュが必要だったせいもあってか、色は忠実には再現されておりません。それでも十分に見応えがある写真です。
 妻は、私と結婚する前には、お母さんとよく旅行をしていたようです。私とは正反対で、非常に行動的な女性なのです。それが、私と結婚して、私が教員を辞めてしまったので、生活にゆとりが少なくなって、大好きな旅行もままならない状況でした。ですから、今回の京都の旅はどうしても妻にプレゼントしたかった旅行だったのです。旅行の当日まで、どうかハプニングが発生してせっかくの計画がキャンセルにならないようにと、真剣に祈っていた私です。
 今回の京都の旅の目的が、この一枚の写真に凝縮されています。美しい季節の京都をこの目で確かめてみたかったということと、そしてまさにこの妻の笑顔が見たかったということなのです。

 小倉山を借景にした天龍寺の庭園はどの季節に訪れても美しさを誇っています。残念ながらここも紅葉のピークを少し過ぎてしまっていたようですが、それでも周辺の紅葉は見事でした。ただし、嵯峨野の竹林に関してはどの季節にも美しい緑色の空間を維持しています。赤の京都もあでやかですが、緑の京都もやはり捨てがたい美しさであることを痛感させられる瞬間です。今回の旅でよくわかったのは、赤だけではなく緑や黄色が混じるから、それぞれの色が際だつのだということでした。

 今回は真っ赤に染まった京都の紅葉を楽しむための旅でしたので、意外に赤く染まった景色が少ない嵐山の様子にちょっとがっかりしていた私でしたが、それは全くの誤解でした。確かに紅葉のピークからは数日遅れて京都の地に降り立った私たちですが、美しい紅葉はまだあちこちにしっかりと残っていたのです。京都に来る前に妻は今回行きたい場所をいくつかピックアップしておりましたので、さっそく彼女のナビに従って、天龍寺からスタートして嵯峨野の散策の旅が始まりました。

 目が覚めるような紅葉の曼殊院を後にしてからは、もう一カ所どこかへという気持ちには到底なれなかったので、妻と私はゆっくりと坂を下って白川通りに出ると、市バスで東山三条まで行き、そこから裏道(古川商店街)を歩いて祇園まで足を伸ばしました。有名な南座の前を通り、夕食をとるお店を探しながらゆっくりと四条通を歩きましたが、めぼしいお店も見つからないまま、とうとう地下鉄烏丸線の烏丸四条駅まで行ってしまいました。仕方ないねということで、二日目の夜も京都駅の地下街ポルタで夕食です。お土産は全て一日目の夜に買って宅急便で茅ヶ崎に送ってしまっていたので、8時ちょうど発車の新幹線まで、ゆったりと過ごす時間ができました。
 京都第2タワーホテルのドリンク券がまだ残っていたので、もう一度ホテルのラウンジによってアイスコーヒーを飲みました。ちょうど修学旅行の盛岡商業高校が来ていて、にぎやかに食事をしておりました。中華だったようですが、食べ物を大鍋で運んでいたボーイさんがミスってその鍋を2つ落としてしまい、床に料理が散乱して支配人が渋い顔で指示を飛ばすというハプニングも見られました。まあ、人の命に関わるようなミスではありませんし、ロビーも混み合ってはいなかったので良しとしましょう。
 帰りの新幹線はきちんと禁煙席が確保できておりましたので、快適な旅をすることができたのですが、途中斜め後ろの中年男性がいきなり携帯電話に向かって大声で話をし出したのには面食らいました。どこに行っても社会のルールを守れない人がいるのは寂しいことです。しかも大の大人がルールを無視する時代ですから、未来の日本を背負う子供たちにどの面下げて教育をするのかと、情けない気持ちになります。

 茅ヶ崎駅からはタクシーで自宅へ。タクシー業界も不況で大変です。そんなに頻繁に使う乗り物ではないので、タクシーを使うときは大抵おつりは受け取らないようにしています。帰宅したのは11時少し前でした。「パパもママも、僕を置いてどこに行ってたんだよぅ!」と、ちぎれるほどにしっぽを振って龍馬が出迎えてくれたのは言うまでもありません。強行軍でしたが、本当に素敵な旅行でした。いろいろ計画を立ててくれた妻にも心から感謝したいと思います。そして、今度は11月の第3週くらいに、ぜひまた紅葉の京都へ旅してみたいと思うのでありました。(完)

 今までは、詩仙堂に寄った後はすぐに京都市内に戻るコースをとっていたのですが、今回はJR東海の宣伝ポスターに使われているほど、紅葉で有名な曼殊院をぜひ訪れたくて、足が再びつるのを覚悟で、長い坂を登って曼殊院を目指しました。確かに長い道のりでしたし、途中後ろから走ってくるタクシーに何度も煩わしい思いをさせられましたが、「名所」と謳われる場所の紅葉は、やはりどんな障害を乗り越えても観に行くだけの価値があることを思い知らされました。小型のデジタルカメラではその美しさは到底表現しきれませんが、どうぞ片鱗だけでもお楽しみ下さい。

 この小さな画像からも鴨川の水のきれいさがおわかりになると思います。鴨川の洛北の部分だからということもあるかも知れませんが、恐らくは観光地としての環境を維持するための地元の方たちの努力の結果なのではないでしょうか。水面に仲良く浮かぶ鴨のつがいが、周囲ののどかな雰囲気をそのまま物語っておりました。さあ、これから紅葉した木々を楽しみながら、目的地の上賀茂神社に向かいます。今日は足がつらないようにペットボトルから常時水を補給しながらの散策です。

 妻が食べたかったのは地元の嵯峨野豆腐を使った湯豆腐料理。目当てのお店は「茶寮弁治(さりょうべんじ)」でした。弁治さんに到着したのはお昼を少し回ったところでしたが、庭で順番待ちをしているお客さんもそれほど多くありませんでした。妻は私の腹具合を心配していましたが、せっかく目当てのお店に到着したのに、少し混んでいるくらいであきらめる手はありません。お目当ての湯豆腐定食にありついた妻の嬉しそうな顔を見てやって下さい。歩きに歩いた一日目の京都の旅を締めくくるのには最高の食事でした。
 嵐山を後にした私たちは、行きと同じJR山陰本線を使って二条駅まで戻り、そこから地下鉄東西線に乗り換えて、京阪三条まで。そこで祇園を歩いて八坂神社と円山公園に行く予定だったのですが、祇園に入ったところで私の足がつってしまい、症状が悪くなる一方だったので、タクシーを拾って宿泊先の京都第2タワーホテルに向かいました。チェックインして自分たちの部屋で少し休んだ後、京都駅地下街ポルタの中華料理店で夕食をとりました。夜の京都に鮮やかに浮かぶ京都タワーの美しさとは対照的に、早めに寝込んでしまう京都の街を象徴するような京都駅の寂しいたたずまいが印象的でした。久しぶりに見た鴨川も情緒豊かでしたね。
 途中で妻がお茶を飲んでいる写真は、清涼寺の境内の一隅にある茶店で有名な「あぶり餅」を食べたときのものです。研究熱心で修学旅行の学生のように好奇心旺盛な目であちこちを探索していた妻ですが、花より団子の瞬間もあるわけです。

 さて、旅行は早くも二日目に突入します。京都第2タワーホテルの朝食も、和食と洋食のバイキングスタイルでした。とてもおいしくいただかせてもらいましたが、いつも宿泊しているホテルフジタ京都の朝食メニューと比べると、やはり少し落ちる感じがします。これは宿泊代との関連なのか、ホテルの方針なのかはよくわかりません。でも、豪華な食事であることには変わりはないので、文句を言ったら罰が当たりますね。今日はまず最初に、妻がどうしても行きたかった上賀茂神社からのスタートです。地下鉄烏丸線と市バスで北山通りまで出て、そこから鴨川縁を散策しながら上賀茂神社に至るコースを選びました。

 紅葉の写真を撮影するのは本当に難しいと思いました。自然光がたっぷりとあたっていればもっと簡単に本物の色を再現できるのですが、空が少し曇っていたりすると、ピントの合わせ方で色が大きく変化してしまいます。この厭離庵ではフラッシュを焚いた方が忠実に赤を表現できたようです。プロのカメラマンらしい人たちも何名か来て大きな三脚を使って撮影していました。雑誌の取材か何かだったのでしょうか。ああいう方たちでも、納得のいく写真を一枚撮影するために、相当の時間をかけていたようですから、素人の私たちが何枚もぱちぱちと撮影するのは邪道だったかも知れません。
 わらぶき屋根は、敷地内にある「時雨亭」という茶席の門の屋根です。京都ではところどこでにわらぶき屋根の民家を目にしますが、まさに日本の情緒ですね。藁葺きの上に色づいた落ち葉が散っている光景は、何とも言えぬ豊かな雰囲気をかもし出しておりました。さあ、そろそろお昼時です。妻は有名な豆腐定食を食べる計画をすでに立てているようでしたので、北嵯峨野に向かってさらに歩きます。

 最後の数枚は常寂光寺を出てから次の目的地である「厭離庵(えんりあん)」に行く途中の風景です。常寂光寺の周辺の紅葉の風景をデジカメの写真から選ぶのは本当に大変です。それほど、どの画像も素晴らしいということなのです。カメラマンの腕が良いのではなくて、誰が撮影しても素晴らしい作品になってしまうほど美しい情景でした。常寂光寺の高台から京都市街を撮影した右側の写真をよく見ると、中央に京都タワーが移っているのに気づきます。小さい画像ではありますが、探してみてください。
 ところで、次に私たちが行った「厭離庵」という名前は、聞いたことがない方が多いのではないでしょうか。実は妻が事前の調査で発見したのですが、俗世間にまみれないようにできるだけパンフレットなどで大々的な宣伝はしないできた、隠れ庵なのでそうです。参拝者だけに配布される冊子には、歌人藤原定家が小倉百人一首を編纂した庵で、藤原定家の位牌が安置されていると書かれていました。庭はそれほど広くはありませんが、その紅葉の見事さは恐らくここに掲載する写真では5分の1も表現し切れていないのではないでしょうか。まさに歌でも詠みたくなる心境でありました。

 2006年12月3日、朝の5時30分ちょっと前に、妻と私はタクシーで茅ヶ崎駅に向かいました。小田原まで車を飛ばして、駅の近くの駐車場に2日間車を預けることも考えたのですが、新幹線の時間が決まっているので、車での移動はどんなハプニングがあるかわかりませんから、結局は一番安全な方法を選びました。それにしても、朝早くからタクシーの運転手さんたちは本当に大変です。
 天気予報では、今日から1週間は大寒波到来。覚悟していた朝でしたが、少し曇っていたせいか、冷え込みはそんなに厳しくありませんでした。JR東海道線で小田原駅に到着する頃には、陽も昇って暖かい一日になりそうな予感がしたくらいです。
 時間には相当余裕を持って行動したので、小田原駅に到着したのは6時20分過ぎでした。新幹線は7時10分発ですから、待合室でゆっくりとお茶を飲むことが出来ます。さあ、待ちに待った京都への旅へいざ出発です。

 旅行への申込が遅かったので、行きの新幹線は禁煙席も隣り合わせの席も確保できませんでした。久しぶりに乗った喫煙車両は空気がよどんでいて、至って健康に悪そうです。たった2時間ぐらい自分の座席で煙草を吸うのを我慢できないようでは、大した仕事は出来ないのではないかと、自分自身も以前は喫煙者であったにもかかわらず、頭の中でぶつぶつ文句を言っていた私です。
 
 京都駅に到着したのが9時20分。いったん外に出てバスと地下鉄の2日分の乗車券を買おうと言うことになったのですが、京都駅はどちら側に降りたら何があるという判断が、一瞬狂ってしまう不思議な場所でして、妻と私で意見が分かれてしまいました。私の感覚では京都タワーとは反対側にバスターミナルがあるのですが、妻はそうではないと言い張ります。私は修学旅行の引率も含めて今回が21回目の京都の旅。絶対に間違えるはずはないのにといらいらして少し大きな声で妻に言い返していたのに、実際には奥様が正解でした。京都タワーがある出口がバス乗り場で、私はレンタバイクやレンタカーの事務所がある東寺側と勘違いしていたようでした。せっかくの旅なので、素直に妻に謝って二人分の乗車券を買い、時間を有効に使うためにその券は使わずに、JR山陰本線に乗って嵐山に直行です。さすがにこの時期の嵐山方面は観光客で混み合います。

 新幹線が発達して京都も遠い場所ではなくなりました。10時30分少し前には私たちは嵐山の渡月橋のあたりにいたのですから、何とも不思議な気持ちです。嵐山はいろいろな種類の木が混在しているので、山全体が真っ赤に色づくことはありません。私は、そんな嵐山よりも渡月橋の近くにあった大きな銀杏の木の鮮やかな黄葉に目を奪われておりました。

 

右側はJR東海の宣伝ポスターになった、専門家の写真です(院内に裏から照明を当てられる形で展示されていたものを撮影)。素晴らしい紅葉ですね。

 市バスに乗って白川通りに入り、「一乗寺下り松」のバス停で降りると、ちょっと遅めの昼食をチェーン店のうどん屋で食べて、緩やかな坂を登って詩仙堂に向かいました。もう何度も訪れている石川丈山の隠居亭。静かなたたずまいの庭園を囲む林はきれいに紅葉した痕跡を残しておりました。私は庭園に備え付けられた鹿威しと、一番低いところにある苔むした丘が気に入っています。古い屋敷風に作られたトイレの外には、満開の酔芙蓉(すいふよう)が雄姿を見せていました。帰ってきてから年配の生徒さんに聞きましたところ、中国産の「酔芙蓉」は、朝は白色の花が夕方にはピンク色に変わるところに特徴があるそうです。大広間に座って四季折々の庭の情景を眺めるのは、さぞかし大きな楽しみだったことでしょう。

 天龍寺を出て竹林を抜ければ、目的地は当然紅葉で有名な常寂光寺になります。以前常寂光寺を尋ねたときには、私は結構体重があったときでしたので、相当疲れた足取りだったのを覚えていますが、今回はものすごく近場に感じました。それもそのはずで、当時85キロあった体重はこの時点で73キロに減っていたのです。今年の6月に禁煙してから体重が順調に減るというのはどうしたことでしょう。一時期は、もしかしたら重い病気にかかっているのではと心配したほどです。
 前回常寂光寺に行ったのは10月の終わり頃だったので、鮮やかだとして知られる紅葉はその一端しか垣間見ることは出来ませんでしたが、今回はピークを過ぎたとはいえ、素晴らしい情景を楽しむことができました。まだ学校の教員を続けていたなら、修学旅行で嵐山方面を自主行動コースに選ぶ子供たちに、ぜひにと薦めていたことでしょう。